辨 |
ハマビシ科 Zygophyllaceae(蒺藜 jílí 科)には、22属 約325種がある。
ユソウボク属 Guaiacum(愈瘡木屬)
ハマビシ属 Tribulus(蒺藜 jílí 屬) 世界に約20種、日本に1種がある
T. cistoides(大花蒺藜) 海南島・雲南から広く熱帯地方に産
ハマビシ T. terresttris(蒺藜)
Zygophyllum(駝蹄瓣屬)
Z. mongolica(Tetraena mongolica;四合木)
Z. xanthoxylum(Sarcoygium xanthoxylum;覇王)
華北・西北・モンゴリアの乾燥地帯に産。根を薬用。
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訓 |
「和名浜芰ハ海濱砂地ニ生ジテ其果實ニ鋭刺ヲ具ヘ宛モひしノ實ノ態アレバ斯ク云フ」(『牧野日本植物図鑑』)。 |
深江輔仁『本草和名』(ca.918)蒺梨子に、「和名波末比之」と。
源順『倭名類聚抄』(ca.934)蒺藜に、「和名波万比之」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』12(1806)蒺藜に、「ハマビシ古今通名 シロヒシ古名 ヒシ勢州」と。 |
漢名について。『爾雅』に「茨、蒺藜なり」と。李時珍は、「蒺は疾なり。藜は利なり。茨は刺なり。其の刺 人を傷つくや、甚だ疾(はや)くして利(と)し」と(本草綱目)。
なお、薺字についてはナズナの訓を見よ。 |
説 |
広く世界の熱帯・温帯の海浜や内陸の乾燥地域に分布する。
日本では本州(千葉・福井以西)・四国・九州に分布、但し絶滅危惧ⅠB類。
中国では全国各地に生育。『中国雑草原色図鑑』123。 |
漢名の薺は、セイ jì と読めばナズナ、シ cí と読めばハマビシ。 |
誌 |
漢方で種子を刺蒺藜(ししつり)・蒺藜子(しつりし)と呼んで薬用にするほか、嫩葉を食用にする。『中薬志Ⅱ』pp.202-205
日本では、生薬シツリシ(蒺■{艸冠に梨}子)は ハマビシの果実である(第十八改正日本薬局方)。 |
乾燥した荒地にはびこり、果実のとげが人を刺し、ほとんど有用なところのないことから、(君子に対して)小人・役立たずの象徴。
なお、日本で言う兵器のてつびし(鉄菱)を、漢語で鐵蒺藜と言う。 |
『詩経』国風・鄘風(ようふう)・牆有茨(しょうゆうし)に、「牆(かきね)に茨(いばら)有り、埽(はら)ふべからず」云々とある茨は、一説にハマビシとする。 |
『楚辞』離騒に、「薋(し)・菉(りょく)・葹(し)を以て室を盈たすに、判として独り離れて服せず」と。薋はハマビシ・菉はカリヤス・葹はオナモミ、いずれも悪草である。
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